睡眠時無呼吸症候群(SAS)について
〜当院では自宅で行う簡易検査・精密検査とCPAP治療に対応しています〜
1. 睡眠時無呼吸症候群とは
「いびきをかく」、「寝ている間に呼吸が止まる」「日中に強い眠気を感じる」——このような症状がある場合、睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)の可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が何度も止まったり、浅くなったりする病気で、放置すると日常生活の質を大きく損なうだけでなく、高血圧・心疾患・脳卒中などの重大な病気を引き起こすこともあります。
健康な人でも睡眠中に一時的に呼吸が浅くなることはありますが、睡眠時無呼吸症候群の方は「1時間に5回以上の無呼吸または低呼吸」がみられます。重症になると、1時間に30回以上も呼吸が止まることがあり、体への負担は非常に大きくなります。
2. 睡眠時無呼吸症候群の主な原因
睡眠時無呼吸症候群の原因は大きく分けて「閉塞型」と「中枢型」に分類されます。
● 閉塞性睡眠時無呼吸(OSA:Obstructive Sleep Apnea)
最も多いタイプです。
睡眠中に舌や喉の筋肉が緩み、気道(空気の通り道)が塞がって呼吸が止まります。
以下のような要因が関係します。
・肥満(首回りに脂肪がつき、気道が狭くなる)
・下あごが小さい、舌が大きいなどの骨格的要因
・加齢や筋力の低下
・飲酒・睡眠薬による筋弛緩
・鼻づまり(アレルギー性鼻炎、鼻中隔湾曲など)
● 中枢性睡眠時無呼吸(CSA:Central Sleep Apnea)
脳から呼吸の指令が一時的に出なくなるタイプです。心不全や脳疾患などを伴う場合が多く、専門的な評価が必要です。
3. 放置するとどうなるか
睡眠時無呼吸症候群を放置すると、以下のようなリスクが高まります。
- 高血圧・動脈硬化の進行
睡眠中の酸素不足が続くと、交感神経が刺激され血圧が上昇します。 - 心臓疾患(心不全・不整脈・狭心症など)
酸素欠乏が心臓に負担をかけ、心疾患の発症リスクを高めます。 - 脳卒中・脳梗塞
睡眠中の血圧変動や血液の粘度上昇が、脳の血管にも影響します。 - 糖尿病・脂質異常症の悪化
代謝異常が進行し、生活習慣病の治療効果を下げることがあります。 - 日中の眠気・集中力低下・交通事故リスク
熟睡できず眠気が強く、仕事や運転に支障をきたすこともあります。
このように睡眠時無呼吸症候群は「いびきの病気」ではなく、全身の健康に深く関わる疾患です。早期発見と治療が非常に大切です。
4. 当院で行う検査について
当院では、ご自宅で行える2種類の検査を導入しています。
「まずは簡単に調べてみたい」「しっかり詳しく調べたい」など、患者様の状況に合わせて選択できます。
(1)自宅で行う簡易検査(スクリーニング検査)
ご自宅で小型の検査装置を装着して眠るだけの、手軽な検査です。
指先に酸素飽和度(SpO₂)センサーをつけ、鼻や口に空気の流れを測るセンサーを装着します。
睡眠中の呼吸状態や酸素の低下回数を解析し、睡眠時無呼吸症候群の疑いがあるかを判定します。
- 対象:いびき、日中の眠気、家族に「呼吸が止まっている」と言われた方
- 所要期間:自宅で1〜2夜の測定
- 費用:保険適用で3割負担の方は3000円前後
- 検査結果:数日後に当院で医師が詳しく説明します
「まずは睡眠時無呼吸症候群の可能性を知りたい」という方におすすめの検査です。
(2)自宅で行う精密検査(在宅ポリソムノグラフィー:PSG)
従来は入院が必要だった「精密検査(PSG)」を、当院では自宅で実施できる機器を導入しています。
脳波・筋電図・眼球運動・呼吸の流れ・酸素濃度などを同時に記録し、睡眠の質と呼吸障害の程度を詳細に評価します。
- 対象:簡易検査で異常がみられた方、より正確な診断を希望される方
- 所要期間:1夜分のデータを自宅で記録
- 検査方法:専用機器を貸出し、スタッフが装着方法を丁寧に説明します
- 精度:入院検査とほぼ同等の解析が可能
- 費用:保険適用で3割負担の方は10000円前後
- 検査後:専門医がデータを解析し、治療方針を決定します
「病院に泊まらずに、正確な検査を受けたい」という方に最適です。
5. 当院の治療方針
睡眠時無呼吸症候群の治療は、重症度や原因に応じて段階的に行います。
当院では、**CPAP療法(持続陽圧呼吸療法)**を中心に、生活習慣の改善指導やマウスピース治療との連携を行っています。
(1)生活習慣の見直し
軽症の方やCPAP導入前の方には、生活習慣の改善をまず行います。
- 減量(体重の5〜10%減で呼吸改善が期待できます)
- 飲酒・喫煙の制限
- 仰向け寝を避け、横向きで眠る
- 睡眠薬の使用を見直す
- 規則正しい睡眠リズムを整える
これらの取り組みだけでも、症状が軽くなる方も少なくありません。
(2)CPAP療法(持続陽圧呼吸療法)
中等症〜重症の閉塞性SASに対して最も有効な治療法です。
睡眠中に鼻マスクを装着し、一定の空気圧を気道に送り込むことで、気道の閉塞を防ぎ、呼吸を安定させます。
- いびきや無呼吸がなくなる
- 睡眠の質が改善し、日中の眠気が軽減
- 血圧や糖尿病のコントロール改善
- 集中力や仕事のパフォーマンス向上
当院では、患者様一人ひとりの顔の形や使用感に合わせて、マスクや機器の調整を丁寧に行っています。
また、使用状況を定期的にモニタリングし、圧力設定の見直しやトラブル対応も迅速に行います。
(3)マウスピース治療(歯科との連携)
軽症の方やCPAPが合わない方には、下顎を前方に固定するマウスピースによる治療が有効な場合があります。
当院では信頼できる歯科医師と連携し、最適な方法を提案します。
6. 当院でのサポート体制
在宅検査から治療まで一貫対応
簡易検査・精密検査・CPAP導入まで、すべて当院で完結できます。
総合内科専門医による総合的な管理
生活習慣病(高血圧・糖尿病など)を併発している方にも、内科的なトータルケアを提供します。
オンライン診療にも対応
定期的なCPAPフォローをオンラインで受けることが可能です。
継続しやすい環境
定期チェックや機器メンテナンスを通じて、治療の継続をしっかりサポートします。
7. このような症状はありませんか?
- 家族に「寝ているときに呼吸が止まっている」と言われる
- いびきが大きい、または途中で止まる
- 朝起きたときに頭痛・倦怠感がある
- 日中に強い眠気がある、居眠りしてしまう
- 夜間に何度も目が覚める
- 集中力や記憶力が低下している
- 高血圧や糖尿病の治療をしても改善しにくい
これらに当てはまる場合は、一度当院へご相談ください。
早期に検査・治療を行うことで、健康を取り戻すことができます。
受診の流れ
① 初診・簡易検査のご案内
医師が症状を伺い、まずは簡易検査をお勧めする場合があります。
機器は専門の業者から郵送します。自宅で装着して一晩測定します。
② 検査結果の説明・治療方針の決定
約1週間後に結果をお伝えし、必要に応じて精密検査や治療を提案します。
③ 治療開始・定期フォロー
CPAP導入後は、定期的に使用状況を確認し、設定調整や体調管理を行います。
最後に
睡眠は、心と体の健康を支える大切な時間です。
「最近よく眠れない」「疲れが取れない」「いびきが気になる」——そう感じたら、それは身体からのサインかもしれません。
当院では、在宅でできる検査と負担の少ない治療を通じて、皆さまの快適な睡眠と健康な毎日をサポートいたします。
お気軽にご相談ください。
